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教育機関 事例

大阪芸術大学

http://www.osaka-geidai.ac.jp/geidai/

『「CLIP STUDIO PAINT EX」でマンガ・イラストからアニメまで』

キャラクター造形学科 学科長
里中満智子教授

大阪芸術大学では2015年4月よりキャラクター造形学科にて「CLIP STUDIO PAINT」を導入されました。導入の背景から里中先生がマンガ家を目指したきっかけ、マンガの与える影響まで語って頂きました。

「たくさんの表現と選択肢を」

ー大阪芸術大学にてデジタルマンガ制作を授業で取り入れられた背景をお聞かせください。

 まず学生たちの卒業後を考えた時に、マンガ家をはじめ、たくさんの職業の選択肢があった方がいいと考えました。

 制作現場ではソフトが使えるかどうかが大きなポイントになります。また、デジタルは直接会わなくてもデータの受け渡しができますから、効率よく仕事の依頼に対応できます。

 なにより表現の方法がたくさんあった方がいいですから、卒業までにはデジタルのスキル表現を身に着けて将来の仕事につながるよう、デジタルの授業を取り入れております。

「デジタルは画材の枠を超えた表現」

ー先生ご自身はデジタル制作をどのようにお考えですか?

 画材の一つとしてデジタルツールは考えられてますが、デジタルを使いこなせるということは、一つの画材が使いこなせる以上に大きな財産になります。

 デジタルで描かれたものでも、ひと筆ひと筆その人の個性が出ます。机の引き出しには収まりきらない、画材の枠を超えた表現方法だと考えています。

「最新の環境で制作を」

ー「ComicStudio」から「CLIP STUDIO PAINT」に移行を決めた理由をお聞かせください。

 まずは新しいソフトが出たからには最新の環境に適したものを使いこなせた方が良いと考えたのが大きな理由です。 また、マンガを描いていながらアニメにも興味がある学生はたくさんいます。ところがその進路によって実際学ぶことが全然違います。

 そんな時、「CLIP STUDIO PAINT」のアニメ機能搭載のお話を耳にしました。

「マンガ・イラスト・アニメの垣根をなくすソフト」

ー「ComicStudio」の時はマンガだけに特化していた部分が、「CLIP STUDIO PAINT」であれば、マンガやイラストだけでなくアニメにも対応できると考えられたということでしょうか。

 そうですね。マンガを描きたいのかアニメを作りたいのか、青春期には難しい決断だと思います。でも、おそらく共有している世界は同じです。本来、若者の将来はたくさん選択肢があり、人生の途中でいくら変えても良いと思っていますので、 「CLIP STUDIO PAINT」がマンガやイラスト制作だけではなくアニメ制作のスタンダードツールになれば、そのような若者たちの悩みを補えるツールになるのではないか、という風に期待しています。

「鉄腕アトムを守りたくて選んだマンガの道」

ー先生はご自分の進路をどのようにお決めになったのでしょうか。

 私は子どもの頃に鉄腕アトムにすごく感動して、大好きでした。ですがマンガというだけで差別され、悪書追放運動が白熱し、アトムも悪書として批判される対象でした。

 中学生の時、今後の進路を考え「自分が一番守りたいと思っているマンガの世界に身を投じたい」と強く思いました。「マンガ家の人たちは世間からは批判されているのに、こんなにすばらしいものを描いてくださっている。何とかこの人たちの後輩になりたい」と思い、マンガ家を目指す事にしました。

 マンガ家になりたいと言った途端、両親は強く反対しました。そのような状況の中、講談社がマンガ雑誌四誌合同の、新人マンガ賞を開催しました。当時、スチュワーデスの初任給が1万7千円くらいだった頃に賞金が10万円でした。

 ここで問題だったのが平日、学校に行っている間に郵便局がしまってしまう為、原稿を郵送できなかった事です。日曜日は郵便局は休みですし、宅配などない時代でした。自分で切手を買って母に頼んでも、ずっと出してもらえませんでした。

 何度もお願いし、母が根負けしてようやく出してくれたものが入選して、デビューが決まりました。もう本当に嬉しかったです。「賞金10万円をどうしよう。まずは貯金しよう」と思ったのですが、手にしたのは、源泉引かれて9万円だったんです。その時に初めて税金と言うものがあるんだ、と知りました。そしてその日から、両親も反対しなくなり、そういうことなら頑張れ、と応援してくれるようになりました。

「マンガを通じて相手の立場を想像するということ」

 「子どもにマンガを読ませるな」というのはとんでもない話だと思います。たとえば映画やテレビドラマでは一方的に物語が進みます。ところがマンガと小説は自分で読まないと物語は前に進まないわけです。また、小説の場合は基本的に三人称で書かれます。客観性を持って書かれているわけです。でもマンガの場合は、登場人物の主観が登場人物の数だけそこにあるわけで、10人いれば10通りの言い分と反応があるということを、感情移入しながら知っていくわけです。これはマンガのすばらしい特性だと思っています。

 子どもたちには、何か一作でも登場人物が5人くらい出てくるものを、義務教育の間に描いてほしいですね。そうすると「主人公に対して、敵対している立場」の言い分も考えなければならず、その立場になって想像することに繋がります。

 正義と悪でも、悪とされている者の言い分もぜひ考えてほしいです。そこから心が育っていくのだろうと考えています。いつかはマンガを義務教育の間で取り入れてもらえたらと思っています。

「想像力が社会を豊かに」

ーマンガ家を目指す方に向けてのメッセージをいただけますか。

 マンガは部屋の片隅でひとりでも作り出せる世界ですから、いつでもデビューのチャンスがあります。自分で描きたいと思うキャラクターを自分で創り上げた物語の中で動かして、誰かに感動を与えられたら、こんなに素敵な事はないと思うので、是非描き続けてほしいです。

 今は紙媒体だけではなくWEB等での発表の場が増えてきましたので、読者の数もどんどん増えています。一人ひとりが創作者になれる時代です。

 マンガ制作にはデッサンなども大切ですが、一番大事なのは本人の感性を磨き、個性的であることです。物語を考える、架空のキャラクターを考えるという想像力が、最終的には社会を豊かにしていく事につながると信じています。

  【大阪芸術大学について】

1945年創立。美術、工芸、デザインなどのアート系から、音楽、文学、演劇、放送などのエンターティメント系まで幅広く15学科を持つ総合芸術大学です。
キャラクター造形学科には、マンガ、アニメ、ゲーム、フィギュアアーツの4コースがあり、入学1年次には全コースについて学び、2年次から自分の適性にあわせて専門コースへ進みます。
各分野で必要とされる表現力を身につけられるようにデジタルソフト、機材は最新のものを十分に準備しています。 

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